綺麗な庭

わたしの救いの箱庭です。

7. フリーズ

凍結、崩壊、融解。 退屈な喜劇。 幾千の螺旋が森を蹂躙する。 ああ、吐きそうだ。 芸術も、人間も、滴る水も、嘘だらけ。 全部が全部フィクションさ。 __________ 巨悪は討ち滅ぼされた! 永遠の抱擁を交わす。 黄金、歓喜。 約束された永遠。 悪趣味な映画…

6. カンブリア

逆行せよ。 文明を忘却。ホモ・サピエンスの失脚。 悠久なる原風景を再生。 血のような海をたゆたう脳みそ。 あらゆる間違いを洗い流して、いっそ皆で駄目になってしまおう。 きっと僕ら、うまくやっていけると思うんだ。 愛すべき我らのカンブリア紀。

5. 帯化

その花はどこかおかしかった。 白昼に咲くグロテスク。 それでも君は息をしろというの? スローモーションで歪んでいく景色。水中みたいだ。 ああ、きっとこれは、一種の文字化けみたいなものだ。 一度どろどろに融けてしまえたら。 アスファルトに染みて、…

4. 硝子のプシュケー

息をしなくてはと、君は無責任に言う。 電気じかけの体、ショートした脳髄を搭載して、ぎこちなく呼吸をする。 重要な回路がどこかへいってしまった。 大切にしまっておいたおいたはずなんだ。 フルートの音に涙して、眼からガラスが溢れた。 水って硝子みた…

3. アルルカン

四角い箱が乱立している淀んだ水槽。 嘲るようなネオンライト。 無垢が歪んでいる。可笑しな様相だ。 真実なんて... 全てが舞台セットに過ぎない。本質は君が立つ地面、それだけ。 それでも皆踊るよ。異形の観客が手を叩く。 明日も明後日も踊る。観客は永久…

2. 胎内の鮫

Elysium 原風景、そこで繰り広げられる神話。 遺伝子食い破れ。血肉を貪れ。 強くなければならない。神はいないから。 忌まわしい本能だ。私は遺伝子を嫌悪する。 君の神話の脇役を、甘んじて受けよう。 海を赤色にするんだ。 君が生き抜いた世界と、私が生…

1. 流線

込み上げる ように 吹き抜ける ように たゆたう ながれる のびてゆく かぜ なみ こえ 凪ぐ わたしのすきな 流線 せいかいをなぞる 曲線 鯨が現れて、わたしは言う。 ユーリカ! 亜空へこだまする。 ユーリカ!ユーリカ!ユーリカ!... たったひとつ このせか…

「間違ったまま幸せになればいいのに。」 まちがったまましあわせになればいいのに。 マチガッタママシアワセニナレバイイノニ?

果物と共に、

民族学と民俗学。 架空の町のルーツを辿れ。 ほら、蝶々が飛んでいるよ。 シナプス蘇れ。 バーミリオンの屋根が陽光を受け、安寧を垂れ流す。人々はごきげんな服を着てドアを開く。 道には小綺麗な装飾品。広場では紙吹雪。誰もが春風のような笑顔をたたえて…

自戒

それはまるで11月のアレルギーのようで、6歳の時に見た高い空のようだった。 終わりを予感する。これ以上何も始まらないように。 戒めを彫り込む。それが自傷行為だということは火を見るより明らかだ。 新月に倣って0になることを約束する。君は君という直線…

どうして

私はこの世界に生まれて、素敵なものを集めていたいだけなのに。

月光美術館はジャングル

いざ夢のジャングルへ... 緊迫感を持て、君の手を引く数多の金属音。赤子の泣き声に似た響音。立ち向かえ。 闇に照らされた石の廊下を照らす魔法。気づくのだ。 スコールスコール。ノイズへ。唇へ。 警笛。警笛。亜空へ。土器へ。 夜空に似た始まり。君のそ…

鯨(くじら)

くじら。まるで怪獣のように心を蹂躙する。成すすべもなく脅かされる脳みそ。 重機のような、兵器のような、神のようなその姿態。終末を予見させるかの如きその慈しみを、船はどう思っているのだろうか。私の皮膚は鈍くうねり始めた。鯨鯨鯨...

じっとりと湿った空っぽに近づいている。

無題2

紫色の唇がいる。北半球の太陽は大体苦しい。 歩くにはそれなりの対応が取られる。ドアを開けるべきではない。 じかんというがいねんは空から降ってこない。ライドシンバルだけが天からの供物。 しゅうしゅうしゃらろん しゅいら しゅうしゅうしゃらろん し…

ユングフラウ

君の中のユングフラウ。汚れてしまったユングフラウ。望郷のユングフラウ。 真っ白な雪が積もって、君は楽しそうに駆け回る。小さなムートンブーツもどきが二匹の小動物みたい。 この雪は君だけのものだ。 サンクチュアリを、君にあげる。 春が来て、雪は真…

無毒化

さて、私自身を解毒しよう。やりかたはいくつかあるはず。 夜中の音楽番組にだまされてはいけない。例えば、あちこちにある特殊な磁場が少しずつヒト科に影響を及ぼす。長い目で見たらそれは致命的だ。 食パン1枚に仕込まれたカテゴライザー。私はジャムとバ…

樹海航海記

ノルディック柄のセーターのような気分になる。或いは、時化の樹海を航海するような、そんな気分になる。 いずれも私がコーヒーを一口すすった時の気分だ。 __一度、荒れた樹海で溺れたことがある。風は強く、波は高かった。大きな揺れで体勢を崩し、そのま…

畏怖

とても漠然とした恐怖を覚える。 それは頑なな秩序を持って絡まっている。残酷な正義を孕んだうねりだ。走る車の群れはなにか別の生き物のように見えた。 テールランプは考え事をしている目と同じように虚ろで、僕が知らないことを僕が知らない思考回路で考…

堕ちゆく

堕ちゆくイカロスは何を思う? 太陽はそれを見て何を思う? 愚かしい本能は蠅から物理学者まで平等だ。 みんなが正しいことをするから、僕だけが間違い続ける。 手始めに太陽と踊ろうとしたと、そういうわけなんだ。本能のままにね。 叶わない代わりにイカロ…

意味

かけがえのない1?それは妄想だろうか、きれい事だろうか。 ペシミズムの海の果てに浮かぶ孤島。君達はその慈愛を受け止めることができるだろうか。 記号的な器に過ぎないのだ。 忙しなく蠢く1達は考えることをやめた。 リノリウムの床は僕らを待ち焦がれて…

無題

ここにいて、どこにもいないような感じがする。体感。 ここは動物園だ。草木が鬱蒼と茂っている。 黄色い催涙ガスが熊を殺す。それはジャズのようなものだった。 やつらは大きくて賢い。そしていろんな色をしている。 海の中のやつらも現れた。小さくて冷た…

8/7

地球がフライパンみたいに熱くなった。 もしそれが本当なら、東京は溶けてくなってしまうだろうか? 息をしている、君はそれで十分だと言った。 それさえも、それさえも... 君は間違いだというの?

フォグランプ

「美しい過去を持てたなら、こうはなってなかったはずだ。」 あらゆるものが祝福の言葉を口にする。透明なはずの雨は魔法にかかったように輝き、風は僕を解毒した。音楽はからっぽな穴を通過してひゅうひゅうと音を鳴らす。 何処へでも行こう。リスの尻尾を…

青白い灯台

巻き戻して欲しい。 誰もいなくなった。静かに、こっそり、しかし確実に。 「僕ももう帰らなくちゃ。」 どこに? 存在しないはずの過去に想いを馳せる。 コントラバスが轟々と呻る。冗談すら息をしていない。 バレリーナはあんなにも綺麗に回る。 僕は泣きな…

漂着

ある寒い冬、海岸に赤子が打ち上げられた。それもトラックほどの大きな大きな赤子。目をしっかり閉じ、裸のまま深い呼吸を繰り返している。 寒さに震えながらも赤子は感じていた。思考や、意識よりももっと深い所で。 来たるカタストロフを。もたらされる悪…

透過

接近する。ゆっくりと“それ”へと近づいて行く。止める手立てはない。 侵食する。“それ”に侵され、また“それ”を侵す。これまでにない快楽と虚無。 同化する。僕と“それ”だけになる。混じり気のない純粋な二つの物質。意味を統合する。辻褄を合わせる。 透過す…

ジュブナイル

どこか遠くの極めてアジア的な空間で催される祭り事。幼い私はぽわぽわとした気分でした。何処からか潮の匂いが、なにかを焼く匂いが。 夜に煌々と照るライトの背後には影、亡霊。高揚した気分の人々はそれに気づかないふりをしています。亡霊が歌うと、私は…

綺譚

くすんだ景色。きっと標高の高い場所にあるんだ。何かを予感させ、絶望させ、安堵させる、無機質とも言える風が吹く。風は何も言わないし、僕らは何も聞けない。それは諦観に近い。 白い柵に囲われた庭。二人分くらいの幅の入り口はちゃちなアーチで飾られて…

博物の館

「剥製」という「物質」。生きていた過去を君は覚えている? 作り物の目玉で、どこか恨めしげに私たちを見ている。 思ったより大きな肋骨で、生きようと動き続けていた皮膚で、私たちを裁く瞬間をガラス1枚向こうで待ち続けている。 君たちが生きていたこと…