綺麗な庭

わたしの救いの箱庭です。

2018-01-01から1年間の記事一覧

ジュブナイル

どこか遠くの極めてアジア的な空間で催される祭り事。幼い私はぽわぽわとした気分でした。何処からか潮の匂いが、なにかを焼く匂いが。 夜に煌々と照るライトの背後には影、亡霊。高揚した気分の人々はそれに気づかないふりをしています。亡霊が歌うと、私は…

綺譚

くすんだ景色。きっと標高の高い場所にあるんだ。何かを予感させ、絶望させ、安堵させる、無機質とも言える風が吹く。風は何も言わないし、僕らは何も聞けない。それは諦観に近い。 白い柵に囲われた庭。二人分くらいの幅の入り口はちゃちなアーチで飾られて…

博物の館

「剥製」という「物質」。生きていた過去を君は覚えている? 作り物の目玉で、どこか恨めしげに私たちを見ている。 思ったより大きな肋骨で、生きようと動き続けていた皮膚で、私たちを裁く瞬間をガラス1枚向こうで待ち続けている。 君たちが生きていたこと…

国道沿い

いつまでも暮れない太陽と、いつになっても読み終わらない物語と、いくら飲んでも減らないコーヒー。 雨が降っていた。誰かが呟いた。「粘土の空」奏でるように他にも何か言っていたような気がするが、雨の音にかき消されてしまっていた。 小綺麗なカフェで…

黒い春

覚醒の時期、道端の小さな花も、風に凪ぐカーテンも、暖かな斜陽も、たちまち真っ黒に染まった。 黒い洋服を着て、残酷な春の日を闊歩する。ひらひらと黒い花びらが舞う。 そこにあるべき正しさと、失われたこころ。日向と日陰の境。白と黒。愛と無。 綱渡り…

最後に海を見た日2

簡単なことを忘れていて、息が詰まる。 寒い寒い夜明けの中、秘密の話をしよう。 水平線。群青。乱反射。 鏡のようにふたり手を合わせ、白い息を吐く。確かに僕は存在して、海を見ている。 歩こうか?潜ろうか?泳ごうか?溺れてみようか? 君となら、なんと…

植物のない世界

正解のないこの物語の中で、僕たちはどうやって幸せになればいいんだろう。