綺麗な庭

僕の救いの箱庭です。

今の僕はただの動いている屍でしかない。

なんの意味も齎さず、白目で呆然としているだけの醜い姿。

殆どがもう駄目になってしまったのだ。タバコを吸って混ぜ物入りの牛乳を飲む。

 

生きることとは、人生とは、自分の存在によって世界に差異をつけることだと考えている。それは目的でもあり、逃れられない呪縛でもある。それがこの世界と関わりを持つということだと。わかるだろ?

 

もう涙も流れない。ずっと悪い夢を見ているみたいだ。四六時中バッドトリップ?悪寒と強拍が皮膚にこびりつく。脳みそはやられている。本当に思考がままならない。物は少ないが無駄が多い部屋、物は多いが無駄が少ない部屋。資本主義?そいつが原因なのか?それとももっと取り返しのつかないなにか?いずれにしろ僕は前者で敗者だ。

庭、庭、庭、それがきっとそうだ。

 

全うしているかい?

 

自分で生きるということを、臓器の使い方を、差異をつくるということを、鏡を描くということを、存在する責任を。

もううんざりだ。それなりに狂ってるよ。

無題

ここにいて、どこにもいないような感じがする。体感。

ここは動物園だ。草木が鬱蒼と茂っている。

 

黄色い催涙ガスが熊を殺す。それはジャズのようなものだった。

やつらは大きくて賢い。そしていろんな色をしている。

海の中のやつらも現れた。小さくて冷たいやつらだ。

これ以上切り裂くのはやめよう、と誰かが言った。王室のカーテンは閉めっぱなしだ。顔の大きな王は泣きっ面で怖がっている、怯えている。

とにかく今は走っている、大勢で。喧騒。カエルの軍団。

ムカデと時がガラスの出口を守っている。バラのようにマンタが包み込む。コウモリだったかもしれない。

やがて争いとなり、椅子を抱えた。壁から鳴る足音に怯える。私とはそういうものである。

大きな獣になろうよ。大きくて、高速道路で暴れるようなやつにさ。夜が来る前に。足音が近づく前に。

黄色いのがいい。来た時に見たやつだ。案外真面目なのかもしれない、と私は思った。

 

数分後私はやられた。気づけなかったのだ。魚だった。なんだかずいぶん疲れたようだ。

強い絶対悪の存在を知る。黒くて赤いやつ。

クレーンから落とされた時に気づくのだろう。呼吸器官は古びた機械仕掛けなんだ。終末を知っている。全てが平面になることを。

ゴツゴツとした皮膚を脱皮する。神聖な出来事。ただ、森が死ぬので、市民は静かに狂っている。

 

いいかこれは実験だ。真に受けるんじゃない。

馬を出せ!青いバッタがやってくる。

壁に唇が描いてある。白いチョークだ。初めて来た時にやつが描いていたものだ。

 

登場人物、僕、鮮やかな青紫色のウールコート。

人を見た目で判断してはいけないというけど、あの夫婦は絶対に危ない。

 

受容

絶望しているのかい?仕方ない、今日は絶好の絶望日和だ。

陳腐だね。可笑しいね。

神様はいないってわかっている、それだけで君は愚かではない。雨は何も拭ってはくれないし、芸術は沈黙している。

 

あったはずの昨日や、存在しない明日へのトリップ。映画を見ている場合じゃないんだ。スープを口に運ぶのにはそんなに時間を要さないはずだ。

窓一枚を隔てて何か違うことが起こっている。気温も湿度もまるで違う。それを誰かがフィクションと呼んだ。

 

君は狂っている。それだけでまともだ。

 

独白

神様がいるなら少し僕の独白に耳を傾けてほしい。

 

2019年の蒸し暑い夏、定められたある種の指標を通過して僕は大人になった。

呆気ないものだった。愛想の悪いゲートの審査官は、顔も見ずにスタンプを押した。どこか割り切れないような気持ちと共に通り抜ける。そのまま歩きながら後方を一瞥し、さてどうしようか、と息をついた時、もう戻れないんだとわかった。同時に前にも進めなくなっていることに気づいた。つまり何処へも行けない。困ったな。と頭を掻く。

 

野菜を食べるようになった、知識を蓄えた、遠くへ行けるようになった。

以前より感情が乏しくなった、妥協することが多くなった、自分を信じることができなくなった。

 

ポケットに入れておいた乗車券を取り出そうとするが、そこには何もない。ああ無くした、と気づく。それと同じで、あの頃のイノセンスを僕はどこかに落としてしまった。それが僕の不注意によるものなのか、何か外的な要因によるものなのかは今となってはわからない。探しにも行けないし、どのみち風化してしまっているだろう。

こうなってしまったら知識も大義も十分な意味をなさなくなる。そのうち現実とのギャップに焦燥を感じ、右往左往し、あるいはそこから動けないまま堕ちてゆく。そういう事例を僕はたくさん知っている。

実のことを言うと、こうなることは薄々わかっていた。それが漠然とした不安、違和感として心に巣食っていたから。今日、一層リアリティを持った鉛みたいなそれは僕の足取りを鈍らせる。どうにかしなければ。

 

不明瞭だ。視界はどこにもピントが合わない。本当さ、比喩なんかじゃない。綺麗な景色や人の顔を見たようで見ていないのだ。昼間の自分を他人のように感じる。自分が本当は何を求めているのか、何処へ行くべきなのか。当人にわからなければ答えは永遠に海の底。1日に何度も、わかんないな、と呟き、海の底の魚に想いを馳せる。

 

何処へも行けない醜い自分に心底辟易する。

ここまでの道のりで僕は何度も間違えた。小さな間違いが重なり、少しずつ道がずれる。ふと振り返ると道は大きく歪み、自分が道に迷っていることに気づく。何処へも行けないとはこういうことだ。こんなことなら何もわからないまま終わりにしてほしかった。

歩く理由を何度も考えた、離脱することも何度も考えた。

 

結局のところ、僕は幸せになりたいだけ。当たり前だけどそれさえ叶えば良い。僕がこの長い旅を離脱しないのはまだ可能性があるから。歩くための足もまだあるし、視力は落ちたが目も見える。決して足場がいいとは言えないけど前には道がある。こんな愚かな脳みそでもものは考えられる。

足りないものの方が多いけど、あるものが見えないほど視力は落ちていない。

と、前向きなことも一応確認しておく。

 

長くなったけどこういうわけです。神様。

完璧なんて望まないので、どうか胸のこの辺りだけ直してもらえませんか?いくつか部品を欠損してしまったみたいなので。

表情を変えて

わからないな。何が正解で何が間違いなのか。いくら考えてもわからないんだ。

初めからそうするべきではなかった?今君は何を考えているの?僕はいつ扉を叩いた?

 

そう、そのまま寝てしまおう。ひとまず数歩下がろう。わからないものを有耶無耶にしてしまおう。

そうするしかないだろう。それこそ答えはないんだから。

道は残されていないんだから。

 

産前の恐怖、無欲の遊郭、瓦解する自我、リーゼ・マイトナーと誰か、シャツのボタンの付け方、こめかみの感覚、堕ちゆくロケット、茹だるようなノイズ、紅潮する装置、感覚と答え合わせ、朝日の味、沈殿する言葉、必要という利用、蛆虫の悦楽、絶望のパッキング、綺麗な肉の作り方、正解という呪い、幸せの捕まえ方。

視界が迂回する、煙を閉じ込める、幻肢で明かりをつける、果実がショートする。

 

そう、そのまま愚かになって仕舞えばいい。

絵筆

更新中。世界が世界を更新している。

歩き回れ、雪の上は慎重に歩け。訳の分からない言葉がそう囁いた。

偽物の安寧が訪れる。そこには拭えない血がこびりついている。

僕は絵を描くよ。更新するんだ。留まることはできないということはよくわかっている。

わかっているんだ。

植物のない世界。それでも君は笑っていられるかい?