綺麗な庭

僕の救いの箱庭です。

混乱

3分前の思考が風化する。置き去りになる。誰も覚えてはいない。

僕はまず不規則な睡眠から目覚める。そして思考する。終わりも始まりもない。誰も僕には着いてこれない。それは僕であっても同じこと。

曖昧なのだ。うんざりする。

パッケージが部屋に散乱している。中身は一体何処へやら。

時間をかけてものを食べ、停止するように眠り、小難しい本を読み、思考する。時々働く。

僕は確かに人間だという真実。

生まれながらにして僕は欠陥生物だった。

漂着

ある寒い冬、海岸に赤子が打ち上げられた。それもトラックほどの大きな大きな赤子。目をしっかり閉じ、裸のまま深い呼吸を繰り返している。

寒さに震えながらも赤子は感じていた。思考や、意識よりももっと深い所で。

来たるカタストロフを。もたらされる悪を。この出来事がその前触れだということを。

野次馬達が赤子を囲む。彼らは気づいているだろうか?

ニュースでも報じられる。『今日未明、〇〇海岸で大きな赤子が打ち上げられているのが発見されました。専門家の方の意見によるとこれは...』(ノイズ) 

そう、ノイズ。電波の調子が悪いらしい。もう始まっているのだ。

朝日が影を作った。

透過

接近する。ゆっくりと“それ”へと近づいて行く。止める手立てはない。

侵食する。“それ”に侵され、また“それ”を侵す。これまでにない快楽と虚無。

同化する。僕と“それ”だけになる。混じり気のない純粋な二つの物質。意味を統合する。辻褄を合わせる。

透過する。”それ“との癒着がなくなり、僕は一切を透過する。電気プラグを、地下鉄を、マントルを、サブウェイを、規格外の3つの穴を。

これはただの大袈裟ななぞなぞだ。

ハッピーエンド

それは確かか?という問いがずっと僕の周りを浮遊している。それは鬱陶しい靄に近い。タバコの煙?帰還するのだ、あらゆる疑問を通り抜けて。

僕がたとえパナマ運河まで行こうと、僕は僕的な役割を果たすだけであって、決して君を恨むようなことはしない。それは確かさ。猿や、登山家や、アメリカの大統領ですら賛同するだろう。

ひび割れのような枯れた枝の隙間から見える2月の空はやけに寛容的に見えて、僕はついいろんなことを話したくなってしまう。過去のこととか、最近の悩みだとか。つまらないジョーク。

あれはなに?これは?僕はロジカルな説明を求めている。ずっと前から。確証が欲しいのだ。確かであって欲しい。僕が歩いていると道の小脇からふっと現れ、曖昧に隣を歩く。僕の歩幅、君の歩幅、新宿を歩く営業マンの歩幅、生まれたてのキリンの歩幅。気づく頃にはLEDライトの残像のようなものを残して去って行く。或いは歩幅が違う、行き先が違う。なにがいけないんだろう?説明を求めている。それでも僕は自分のペースを崩さないように踊る。その必要があるから。

帰還しよう。いつかきっと還ろう。君に朝だと言って起こせるような場所に辿り着く為に、お洒落な格好をして踊っている。

羊もかっこうもまだいない。

 

変遷

僕にとってそれは割と大きな出来事だったのかもしれない。衝撃的な革命。

拙いが故に気づかなかった過ち、それによってもたらされた災い。今思えばあの時から僕はゆっくりと変化し始めた。災害による被害を着々と復旧していくように。二度と間違わないように。

そう言えば夢を見たんだ。あなたに火をつけて燃やす夢。それ以上でも以下でもない夢。

丁度僕が絵を描かなくなったのもその頃からだ。(まるで脳の構造が組み替えられたようだ。)

愚かな白痴に突きつけられた理不尽とも言える現実。今の今まですっかり忘れていたよ。実際あの時僕は何を考えていたんだろう?ある意味変化を強いられたのかもしれない。白い蛹。

 

場面切り替わって夜行バスの中。日をまたぐ時間帯。高速道路の光が僕らの皮膚を撫でていく。閉鎖的な静寂と自己完結的な暗闇の中の確かな2つの鼓動。その時僕は幸せを確信できた。

 

中立とも鳥瞰的とも他人事とも言える立場になった僕はまだ蛹から出られないでいる。ここはずいぶん居心地がいいし、自分と他人のふりだってできる。あの出来事はこっそりと小さな針を刺した。戒めのように。

否が応でも蝶にならなければならない。綺麗じゃなくてもいいから、どこか遠くへ行ける羽が僕は欲しい。

ジュブナイル

どこか遠くの極めてアジア的な空間で催される祭り事。幼い私はぽわぽわとした気分でした。何処からか潮の匂いが、なにかを焼く匂いが。

夜に煌々と照るライトの背後には影、亡霊。高揚した気分の人々はそれに気づかないふりをしています。亡霊が歌うと、私はとっても懐かしい気分になります。軽い熱に浮かされたように、ぼーっとしてしまうのです。

今この瞬間にこのお祭りがぱっと消えて無くなってもおかしくはないのです。そんな不安を人々は抱きながら亡霊の歌を聴いています。そんな時私は「きっともう元いた場所には帰れないな。」と、こう思うのです。それほどまでにこの歌は、異世界的で、呪術的で、郷愁的で、刹那的で、絶望的なのです。

ほら、きづくともうそこはさっきまでいたところではなくなっている。