畏怖
とても漠然とした恐怖を覚える。
それは頑なな秩序を持って絡まっている。残酷な正義を孕んだうねりだ。走る車の群れはなにか別の生き物のように見えた。
テールランプは考え事をしている目と同じように虚ろで、僕が知らないことを僕が知らない思考回路で考えている。脳みその構想がまるで違うのかもしれない。
この難解な街で独りきりになってしまった。現実味のない歩道橋からそれを眺める。
例えばあのビルの屋上から落ちたら救われるだろうか?街灯は眠ったように黙り込んでいる。
あの車たちはどこへ行くのだろう。
僕もどこか知らないところへ連れってくれ。
無題
ここにいて、どこにもいないような感じがする。体感。
ここは動物園だ。草木が鬱蒼と茂っている。
黄色い催涙ガスが熊を殺す。それはジャズのようなものだった。
やつらは大きくて賢い。そしていろんな色をしている。
海の中のやつらも現れた。小さくて冷たいやつらだ。
これ以上切り裂くのはやめよう、と誰かが言った。王室のカーテンは閉めっぱなしだ。顔の大きな王は泣きっ面で怖がっている、怯えている。
とにかく今は走っている、大勢で。喧騒。カエルの軍団。
ムカデと時がガラスの出口を守っている。バラのようにマンタが包み込む。コウモリだったかもしれない。
やがて争いとなり、椅子を抱えた。壁から鳴る足音に怯える。私とはそういうものである。
大きな獣になろうよ。大きくて、高速道路で暴れるようなやつにさ。夜が来る前に。足音が近づく前に。
黄色いのがいい。来た時に見たやつだ。案外真面目なのかもしれない、と私は思った。
数分後私はやられた。気づけなかったのだ。魚だった。なんだかずいぶん疲れたようだ。
強い絶対悪の存在を知る。黒くて赤いやつ。
クレーンから落とされた時に気づくのだろう。呼吸器官は古びた機械仕掛けなんだ。終末を知っている。全てが平面になることを。
ゴツゴツとした皮膚を脱皮する。神聖な出来事。ただ、森が死ぬので、市民は静かに狂っている。
いいかこれは実験だ。真に受けるんじゃない。
馬を出せ!青いバッタがやってくる。
壁に唇が描いてある。白いチョークだ。初めて来た時にやつが描いていたものだ。
登場人物、僕、鮮やかな青紫色のウールコート。
人を見た目で判断してはいけないというけど、あの夫婦は絶対に危ない。
8/7
地球がフライパンみたいに熱くなった。
もしそれが本当なら、東京は溶けてくなってしまうだろうか?
息をしている、君はそれで十分だと言った。
それさえも、それさえも...
君は間違いだというの?
フォグランプ
「美しい過去を持てたなら、こうはなってなかったはずだ。」
あらゆるものが祝福の言葉を口にする。透明なはずの雨は魔法にかかったように輝き、風は僕を解毒した。音楽はからっぽな穴を通過してひゅうひゅうと音を鳴らす。
何処へでも行こう。リスの尻尾を追いかけて、ここではないところへ行こう。
帰り道の霧はとても濃かった。自分の存在を忘れてしまいそうなほど。救いは、助けはないと思ってしまうほど。
存在を知らせる必要があった。必要はなかったかもしれない、しかしそうせざるを得なかった。霧の中でも間違ってしまわないように。
「忘れられた船出だ!」
「ハレルヤ!」