綺麗な庭

わたしの救いの箱庭です。

畏怖

とても漠然とした恐怖を覚える。

それは頑なな秩序を持って絡まっている。残酷な正義を孕んだうねりだ。走る車の群れはなにか別の生き物のように見えた。

テールランプは考え事をしている目と同じように虚ろで、僕が知らないことを僕が知らない思考回路で考えている。脳みその構想がまるで違うのかもしれない。

 

この難解な街で独りきりになってしまった。現実味のない歩道橋からそれを眺める。

例えばあのビルの屋上から落ちたら救われるだろうか?街灯は眠ったように黙り込んでいる。

 

あの車たちはどこへ行くのだろう。

僕もどこか知らないところへ連れってくれ。

堕ちゆく

堕ちゆくイカロスは何を思う?

太陽はそれを見て何を思う?

 

愚かしい本能は蠅から物理学者まで平等だ。

 

みんなが正しいことをするから、僕だけが間違い続ける。

手始めに太陽と踊ろうとしたと、そういうわけなんだ。本能のままにね。

 

叶わない代わりにイカロス、君にだって傷つくことはできる。唯一の出口を選ぶんだ。

 

意味

かけがえのない1?それは妄想だろうか、きれい事だろうか。

ペシミズムの海の果てに浮かぶ孤島。君達はその慈愛を受け止めることができるだろうか。

 

記号的な器に過ぎないのだ。

忙しなく蠢く1達は考えることをやめた。

 

リノリウムの床は僕らを待ち焦がれている。

 

無題

ここにいて、どこにもいないような感じがする。体感。

ここは動物園だ。草木が鬱蒼と茂っている。

 

黄色い催涙ガスが熊を殺す。それはジャズのようなものだった。

やつらは大きくて賢い。そしていろんな色をしている。

海の中のやつらも現れた。小さくて冷たいやつらだ。

これ以上切り裂くのはやめよう、と誰かが言った。王室のカーテンは閉めっぱなしだ。顔の大きな王は泣きっ面で怖がっている、怯えている。

とにかく今は走っている、大勢で。喧騒。カエルの軍団。

ムカデと時がガラスの出口を守っている。バラのようにマンタが包み込む。コウモリだったかもしれない。

やがて争いとなり、椅子を抱えた。壁から鳴る足音に怯える。私とはそういうものである。

大きな獣になろうよ。大きくて、高速道路で暴れるようなやつにさ。夜が来る前に。足音が近づく前に。

黄色いのがいい。来た時に見たやつだ。案外真面目なのかもしれない、と私は思った。

 

数分後私はやられた。気づけなかったのだ。魚だった。なんだかずいぶん疲れたようだ。

強い絶対悪の存在を知る。黒くて赤いやつ。

クレーンから落とされた時に気づくのだろう。呼吸器官は古びた機械仕掛けなんだ。終末を知っている。全てが平面になることを。

ゴツゴツとした皮膚を脱皮する。神聖な出来事。ただ、森が死ぬので、市民は静かに狂っている。

 

いいかこれは実験だ。真に受けるんじゃない。

馬を出せ!青いバッタがやってくる。

壁に唇が描いてある。白いチョークだ。初めて来た時にやつが描いていたものだ。

 

登場人物、僕、鮮やかな青紫色のウールコート。

人を見た目で判断してはいけないというけど、あの夫婦は絶対に危ない。

 

8/7

地球がフライパンみたいに熱くなった。

もしそれが本当なら、東京は溶けてくなってしまうだろうか?

息をしている、君はそれで十分だと言った。

それさえも、それさえも...

 

君は間違いだというの?

フォグランプ

「美しい過去を持てたなら、こうはなってなかったはずだ。」

あらゆるものが祝福の言葉を口にする。透明なはずの雨は魔法にかかったように輝き、風は僕を解毒した。音楽はからっぽな穴を通過してひゅうひゅうと音を鳴らす。

何処へでも行こう。リスの尻尾を追いかけて、ここではないところへ行こう。

 

帰り道の霧はとても濃かった。自分の存在を忘れてしまいそうなほど。救いは、助けはないと思ってしまうほど。

存在を知らせる必要があった。必要はなかったかもしれない、しかしそうせざるを得なかった。霧の中でも間違ってしまわないように。

 

「忘れられた船出だ!」

「ハレルヤ!」

青白い灯台

巻き戻して欲しい。

誰もいなくなった。静かに、こっそり、しかし確実に。

「僕ももう帰らなくちゃ。」

どこに?

存在しないはずの過去に想いを馳せる。

コントラバスが轟々と呻る。冗談すら息をしていない。

 

バレリーナはあんなにも綺麗に回る。

 

僕は泣きながら胃の中のものを吐き出した。

巻き戻してくれないか。お願いだ。

明日があることなどなんの救いにもならない。

僕はただ純粋でありたかっただけなのに。