古い未来の記憶
馴染み深い曲を背景に僕は家族らしき人間と戯れている。
木がまばらに生えている公園。遊具は木製で、数が少ない。
やけに雲のない、演出されたような空。
冬めいた秋。水彩絵の具で薄く誤魔化したような視界。
全てが絶好のコンディション。
幸せそうに笑っている君は誰だ。
はたまた賢い少女であるのか。
柔らかい日差しが君の笑顔を真っ白にする。
しかし、僕の心にはほんのわずかの焦燥が居座っていた。理由はわからない。
このいまを手放してしまいたくない。
瞼を開けてみると硬いベッドと馴染み深いBGMが流れていた。
望郷
訪れたことのない故郷へ帰る。
生きていない時間を慈しむ。
知らない記憶が蘇る。
信仰
僕は宗教のことはよくわからないんだけど、信仰の対象が目の前でみるみる朽ち果てていったら教徒はどうなるんだろう。
今まで自分の唯一の光で、希望で、柱で、救いだった対象が情けなく失われて行く。冷たい息。
教徒はどうするのだろう?
僕はどうしたらいいのだろう?
祈り
神様なんて信じている人は馬鹿だ。
馬鹿な人たちは、寂しいから一人で手を合わせる。きっと冷たい手をしてる。だから手を熱心に擦る。
じゃあ僕も、なんて思って、自分で馬鹿だなあと思いながら手を合わせる。そうしていないと、寂しいし、手が冷たい。するとなにもできやしない。
誰か、僕の手を温めてくれる人はいないでしょうか?馬鹿が思ったそれに応えて、神様は人間に火を与えた。なんだ、みんな寂しがってたんだ。
寂しいから、花を燃やす。これだから馬鹿は。