「美しい過去を持てたなら、こうはなってなかったはずだ。」
あらゆるものが祝福の言葉を口にする。透明なはずの雨は魔法にかかったように輝き、風は僕を解毒した。音楽はからっぽな穴を通過してひゅうひゅうと音を鳴らす。
何処へでも行こう。リスの尻尾を追いかけて、ここではないところへ行こう。
帰り道の霧はとても濃かった。自分の存在を忘れてしまいそうなほど。救いは、助けはないと思ってしまうほど。
存在を知らせる必要があった。必要はなかったかもしれない、しかしそうせざるを得なかった。霧の中でも間違ってしまわないように。
「忘れられた船出だ!」
「ハレルヤ!」