綺麗な庭

僕の救いの箱庭です。

深海

間違いのない世界に咲いた花、当然のように僕を殺した。この世界では、僕だけが間違い続けてしまう。ピアノは寂しいと嘆き、僕はそれに頷く。 思ったより僕は冷静なようで、まずいコーヒーをすすりながら呼吸をする。吸って、吐くだけ。祝福の夜はとうに昔の…

相対

そんな時にばかり夢を見る。いつもそうやって過ちを犯す。1と0と0と1を比べてしまう。 夢は着実に現実を蝕んで行く。チェロの音が鳴る霧だらけの森に巣食う怪物のように蝕んで行く。 長くて急な坂道を登って下って、ブレーキ。体温、肌、声。 曖昧な夜には煙…

旋律と背景とともに

くどいくらいのコーヒーの味。砂糖は多めで。憂鬱な雨と気だるげな空と、報われることはないアスファルト。 どこか遠くの知らない場所、そこにいる誰かは僕の帰りを待ち望んでいる。僕自身もそこへ行くことを強く望んでいる。 神話的な風景。 昨日、夢を、見…

博物の館

「剥製」という「物質」。生きていた過去を君は覚えている? 作り物の目玉で、どこか恨めしげに私たちを見ている。 思ったより大きな肋骨で、生きようと動き続けていた皮膚で、私たちを裁く瞬間をガラス1枚向こうで待ち続けている。 君たちが生きていたこと…

国道沿い

いつまでも暮れない太陽と、いつになっても読み終わらない物語と、いくら飲んでも減らないコーヒー。 雨が降っていた。誰かが呟いた。「粘土の空」奏でるように他にも何か言っていたような気がするが、雨の音にかき消されてしまっていた。 小綺麗なカフェで…

黒い春

覚醒の時期、道端の小さな花も、風に凪ぐカーテンも、暖かな斜陽も、たちまち真っ黒に染まった。 黒い洋服を着て、残酷な春の日を闊歩する。ひらひらと黒い花びらが舞う。 そこにあるべき正しさと、失われたこころ。日向と日陰の境。白と黒。愛と無。 綱渡り…

最後に海を見た日2

簡単なことを忘れていて、息が詰まる。 寒い寒い夜明けの中、秘密の話をしよう。 水平線。群青。乱反射。 鏡のようにふたり手を合わせ、白い息を吐く。確かに僕は存在して、海を見ている。 歩こうか?潜ろうか?泳ごうか?溺れてみようか? 君となら、なんと…

植物のない世界

正解のないこの物語の中で、僕たちはどうやって幸せになればいいんだろう。

最後に海を見た日

最後に海を見た日を、僕は覚えていない。 僕は海岸から海を見つめる。日は陰り、遠くの空が紫に染まる。 波は強く繰り返される。脈を打つ。生きている。強く。正しく。 横目に走る少女を捉えた。とても足が速い。勢いよく海に突っ込み、ぐんぐん進む。とうと…

秒針と流星

呪いは綺麗さっぱりなくなり、病だけが身体を蝕む。 冬の空に幾つもの流れ星をみた。刹那的な生命、終わりある光、数秒の意味。 毎晩僕は間違ってしまう。許すことができるのは僕だけ。あの流れ星を見たのは僕だけ。間違ったのは僕だけ。病にかかっているの…

慟哭

みんないつか幸せになってしまう。 君はきっと僕の知らない誰かの隣で笑っているだろう。 僕はいろいろ欠けてしまっていて、幸せにはなれない欠陥品。真っ暗な道をわざと踏み外してずっと深いところへ堕ちてゆく。深海より深くて、魚もいない。何も見えない…

しあわせ

幸せが手のひらから零れ落ちる。 僕は焦らないように、慎重に息をする。 強がって強がって何処かで一人で死を迎えるけど、墓標を建てる誰かはいない。どこにもいない。 「どこかへ逃げないと。」 「どこへ?」 「出来るだけ遠くへ。」 「醜い。」 「そうとも…

どうしようもない世界だから

いいよ、君を失っても。 いいよ、君が誰かに奪われても。 いいよ、君が誰かを許しても。 いいよ、君の目が見えなくなっても。 いいよ、君が君じゃなくなっても。 いいよ、僕を忘れても。 君が幸せになれるなら、いいよ。

6月の女王

雨の月、彼女は女王になる。 1つ歩みを進め、民は跪く。 好き放題嵐を起こし、さめざめと泣く。 君には自由も、束縛も似合わない。 いつまでもそこで凛としていてくれればいい。視線の先から僕が消えても、好き放題嵐を起こし、さめざめと泣いてくれ。 我が…

発祥

患った。意味になってくれてありがとう。 決して煩わしいものなんかではなく、空いた穴を埋めてくれる。時間や理論や思考はすっ飛ばして、6号線も2丁目も赤い信号も一蹴してしまう。 果てしなく加速して、ひっそりと停滞して、幸せになろうじゃないか。今だ…

引鉄

とうとう呪いが脳みその中枢にまで到達した。 様々な感情がフラッシュバックする。 君の笑顔がまた見たい。 もうあの頃の目では見つめてくれないんだね。そりゃそうか。いつの間にか薄いカーテンが引かれていたみたい。いや、ずっと僕たちの間にはそういうも…

ペルセポネ

結局君は僕が好きと言った髪型にしていた。 結局僕の前髪は君に言われた通りに分けられている。 なんなんだろう。なんなんだよ。 変わらない馬の尻尾。それは僕が望んだものだった。望んだものを手にしていた。 そしてそれを失った。失ってなお、忘れること…

春ゾンビ

冬を過ぎても死に切れなかった可哀想な元人間。 彼らは永遠に春の東京を彷徨い続ける。

絵画

あまり天気の良くない午前中、老婆はたくさんの花をリヤカーに積んで街へ降りる。遠くの山には日光が降り注いでいる。 途中で一羽のうさぎが囁いた。 「花を運び、幸せを買う。幸せを売り、幸せを買う。」 しばらく行くと、頭上の渡り鳥が言った。 「遠くへ…

交わる

輪郭が収束していく。 リビングルームの、天井と壁の間。 視線は一点を見つめている。 淡白で、極めて三次元的な空間。 僕は何処へゆけば良いのだろうか。 狭い部屋をあてもなく彷徨う。 途方も無い砂漠。旅人と挨拶を交わす。 そうしている間に 僕の、誰か…

笑い声

彼女の笑い声が、君の笑い声に似ていた。 小動物、マウス、白いラット。花束。 彼女の笑い声を聞くたびに君を思い出してしまったら、どうしてくれる? 君はどうして幸せになるの? 噛みちぎって、赤い肉を貪り喰う。骨まで砕いて、全部胃の中に。 生と死。 …

寄生

また夢を見た。 君は拒絶しなかった。 世界には、僕ら2人しか存在しない。 いっそ2人で溶けてなくなりたかった。 いつこの亡霊は消えるのだろうか。耳元で幸せの台詞を囁く。 脳味噌に君が寄生しているようだ。 廃病院をいつまでも君と彷徨っていた。 あの夢…

この上ない絶望。

存在の証明。 僕は今、いい夢を見ている。 君の小さな小さな肩を抱く。そこに残るのは一対の白い石像。 「凍結させてしまおう。」聖者は言った。 いつまでも開かない花火。秋になっても、冬になってもずっと。 幸せの種類。剥製にしてしまおう。 市民は1人に…

人々は箱の中

途方も無い丘。 幼い頃に感じた、予感と期待を孕み腹のように膨らんだ丘。

(自分への戒めとして。) 愛すべき花のような人間。ある意味では、それは花に例えるには生き生きし過ぎているくらい、綺麗な花。 花は他を選ばすに生きて行く。(或いは選べずに死んで行く。)強いて言うなら太陽、水。造花でもない限り。 そんなわけで僕は太陽…

ルビー

追って来る豹。僕は蝶を追いかける。 今まで蝶を素手で捕まえられた試しがないけど、なんとかやってみよう。 追いかけても追われても僕は一応前進してると思う。 でもそれが本当は挟み撃ちだったら? やめようこの話は。今日みたいな涼しい夏の夜には相応し…

春の走り書き

以下の文章は、通俗的に「春」と呼ばれている時代に、この庭の主人によって書かれた走り書きである。机の奥の方でとても良い状態で発見された。 庭の主人はなぜ書いたのか覚えていないそうだ。 自分が人より劣ってると思うわけで、それは他人が僕の知らない…

遠雷

遠くで鳴いた雷が、その鋭い風貌とは裏腹に、兵隊の足音のような響きを轟かす。 それは人々に恐怖を与えかねない。 気をつけて。

不可触

無機質な街の中で、君の心臓は強く脈を打った。 もう夢は朧げになって、僕は別の細胞に作り変えられてゆく。 青リンゴはまだまだ食べられない。

鉛と降雨、ベッドの上で夢を

ベッドの中で君は遠くへ行ったことを悔いた。視界は鉛でコーティングされたように数段階暗い。雨の日なのかもしれない。 嬉しくて笑うと覚醒に呼び戻された。 頭を抱え、あるはずのない四角い部屋に意識を戻そうとする。 そんな日に君と会ってしまったのが間…