綺麗な庭

僕の救いの箱庭です。

いつのまにか愚かな白痴になっていた。 このまま生きてしまいたくない。

良い日の夜明けは青いと気づいた。

きっと今日を生きたという証拠が欲しいのだ。根拠とも、痕跡とも言う。 代替不可能だと言う証明を... それが許されないのなら、私は一切を放棄する。 どうか安らかな眠りを...

アブダクション

目眩がする。ここは空気が悪い。 君もそう思うだろ? 機械仕掛けのタコの触手みたいに四方に伸びる駅前の歩道橋。 顔を上げてごらん、街灯だって息も絶え絶え。 帰ろう。たしか冷蔵庫にはチョコレートが入ってるはず。宇宙ステーションみたいな光が漏れ出す。…

親愛なる猿達へ

間違いと共に生きる人生だ。みんな溶けてしまえばいいのに、僕もそう思う。 惰性的な日々の惰性的な帰り道。荷物がやけに重い。歩き方を忘れてぎこちなくなる足取り。 喧騒、笑い声、夕日。 馬鹿みたいな猿達とすれ違う。その度に見えない煙草の煙を飲む。馬…

狂う、それ以上でも以下でもない

気づいたら僕は間違い続けていた。振り返るとそこには死んだ僕がいた。輪郭だけが残った抜け殻みたいだ。 強くなれたと思ったのに、正解を選んでいたと思ったのに。 相変わらず僕はこれっぽっちも変われていなかった。どうして?あの綺麗な花を守ることがで…

永遠の図書館

紛れも無い過去の記憶。匂い。 またこの季節が来て、同じことを思う。 それは児童図書館のように可愛らしいこと。画用紙で作られた桜の花。うさぎが笑っている。茶色い本棚。 僕を置いて行く、置いて行く、置いて行く。 取り残される、取り残される、取り残…

混乱

3分前の思考が風化する。置き去りになる。誰も覚えてはいない。 僕はまず不規則な睡眠から目覚める。そして思考する。終わりも始まりもない。誰も僕には着いてこれない。それは僕であっても同じこと。 曖昧なのだ。うんざりする。 パッケージが部屋に散乱し…

5:47

横殴りの風、大粒の雨。 それは心地良い蹂躙。混乱を受容するのだ。 夜明け、空が群青に染まる。 ドレスみたいなそれらを纏って君は笑う。やはりどこか懐かしい。 それ以上でも以下でもなかった。

漂着

ある寒い冬、海岸に赤子が打ち上げられた。それもトラックほどの大きな大きな赤子。目をしっかり閉じ、裸のまま深い呼吸を繰り返している。 寒さに震えながらも赤子は感じていた。思考や、意識よりももっと深い所で。 来たるカタストロフを。もたらされる悪…

透過

接近する。ゆっくりと“それ”へと近づいて行く。止める手立てはない。 侵食する。“それ”に侵され、また“それ”を侵す。これまでにない快楽と虚無。 同化する。僕と“それ”だけになる。混じり気のない純粋な二つの物質。意味を統合する。辻褄を合わせる。 透過す…

ハッピーエンド

それは確かか?という問いがずっと僕の周りを浮遊している。それは鬱陶しい靄に近い。タバコの煙?帰還するのだ、あらゆる疑問を通り抜けて。 僕がたとえパナマ運河まで行こうと、僕は僕的な役割を果たすだけであって、決して君を恨むようなことはしない。そ…

変遷

僕にとってそれは割と大きな出来事だったのかもしれない。衝撃的な革命。 拙いが故に気づかなかった過ち、それによってもたらされた災い。今思えばあの時から僕はゆっくりと変化し始めた。災害による被害を着々と復旧していくように。二度と間違わないように…

ジュブナイル

どこか遠くの極めてアジア的な空間で催される祭り事。幼い私はぽわぽわとした気分でした。何処からか潮の匂いが、なにかを焼く匂いが。 夜に煌々と照るライトの背後には影、亡霊。高揚した気分の人々はそれに気づかないふりをしています。亡霊が歌うと、私は…

ハーバリウムって言うんだって

気が狂ってしまいそうなんだ。持っていない物を探して随分経つ。海岸に打ち上げられた一匹の僕。不幸の前触れ。 角砂糖の中で生きている。甘い甘い鳥籠。ここにいるときは安心できるんだ。馬鹿になって、なにも考えないから。間延びした声で夢を語る。あくび…

綺譚

くすんだ景色。きっと標高の高い場所にあるんだ。何かを予感させ、絶望させ、安堵させる、無機質とも言える風が吹く。風は何も言わないし、僕らは何も聞けない。それは諦観に近い。 白い柵に囲われた庭。二人分くらいの幅の入り口はちゃちなアーチで飾られて…

モラトリアムアクアリウム

ぶくぶく。たっぷりと満たされた適温の水。餌を食べて満腹。ぐっすり寝る。 ぶくぶくぶく。 タバコを深く吸って大きくため息をつく。可視化されたため息。 丸い目をした金魚に問う。「お前は今何者だ。名前は?好きな食べ物は?明日は何する予定?」 金魚は…

何者

君は画家で、あなたは香水を作っている。彼女は遠い国で花屋をやっていて、さっきすれ違った男は吸血鬼で、たくさんの警察が目を光らせている。水族館では、消防士、音楽家、ドイツ人のプログラマー、軍人、薬局の店長、地底人、テレビの関係者。フランケン…

虚を泳ぐ

一人の魔女の家を僕は知っている。 魔女に尋ねる。 「愛は?」 「なくした。殺しちゃった。」 当たり前のように言うものだから、僕は悲しくなった。 真っ赤な花、y軸の方程式。 僕は魔女にただ笑って欲しかった。ピエロにもなった。上手に笑おうとした。 い…

lily

誰かが叫んでいる。聞こえる? 雨が降っている。梅雨だから。雨粒の断末魔。たくさんの綺麗を見て、酔って、吐いて。 君は綺麗になるよ。雨粒のような瞳に、黒い髪。 雨の中のリリィ。聞こえる?

空っぽの独白

悲しいと感じた。純粋な感情。 映画を見て涙を流した。君のように何かを持っている人間は生き、私は死んだ。 真っ逆さまさ。幸せなら手を、どうかこんな僕の手をとって救ってはくれないだろうか。君は生き、私は死んだ。黒い寒すぎるプールに落ちて死んだ。…

環世界

僕に見えている景色がある。浴室は浴室たりえる光の反射を見せ、鏡には僕が見える。 娼婦に見えている景色がある。人間の性と罪、自分が歩くべき歩幅が見える。 男に見えている世界がある。右脳から生まれた彫刻、檻を開ける鍵が見える。 君には何が見える?…

深海

間違いのない世界に咲いた花、当然のように僕を殺した。この世界では、僕だけが間違い続けてしまう。ピアノは寂しいと嘆き、僕はそれに頷く。 思ったより僕は冷静なようで、まずいコーヒーをすすりながら呼吸をする。吸って、吐くだけ。祝福の夜はとうに昔の…

相対

そんな時にばかり夢を見る。いつもそうやって過ちを犯す。1と0と0と1を比べてしまう。 夢は着実に現実を蝕んで行く。チェロの音が鳴る霧だらけの森に巣食う怪物のように蝕んで行く。 長くて急な坂道を登って下って、ブレーキ。体温、肌、声。 曖昧な夜には煙…

旋律と背景とともに

くどいくらいのコーヒーの味。砂糖は多めで。憂鬱な雨と気だるげな空と、報われることはないアスファルト。 どこか遠くの知らない場所、そこにいる誰かは僕の帰りを待ち望んでいる。僕自身もそこへ行くことを強く望んでいる。 神話的な風景。 昨日、夢を、見…

博物の館

「剥製」という「物質」。生きていた過去を君は覚えている? 作り物の目玉で、どこか恨めしげに私たちを見ている。 思ったより大きな肋骨で、生きようと動き続けていた皮膚で、私たちを裁く瞬間をガラス1枚向こうで待ち続けている。 君たちが生きていたこと…

国道沿い

いつまでも暮れない太陽と、いつになっても読み終わらない物語と、いくら飲んでも減らないコーヒー。 雨が降っていた。誰かが呟いた。「粘土の空」奏でるように他にも何か言っていたような気がするが、雨の音にかき消されてしまっていた。 小綺麗なカフェで…

黒い春

覚醒の時期、道端の小さな花も、風に凪ぐカーテンも、暖かな斜陽も、たちまち真っ黒に染まった。 黒い洋服を着て、残酷な春の日を闊歩する。ひらひらと黒い花びらが舞う。 そこにあるべき正しさと、失われたこころ。日向と日陰の境。白と黒。愛と無。 綱渡り…

最後に海を見た日2

簡単なことを忘れていて、息が詰まる。 寒い寒い夜明けの中、秘密の話をしよう。 水平線。群青。乱反射。 鏡のようにふたり手を合わせ、白い息を吐く。確かに僕は存在して、海を見ている。 歩こうか?潜ろうか?泳ごうか?溺れてみようか? 君となら、なんと…

植物のない世界

正解のないこの物語の中で、僕たちはどうやって幸せになればいいんだろう。

最後に海を見た日

最後に海を見た日を、僕は覚えていない。 僕は海岸から海を見つめる。日は陰り、遠くの空が紫に染まる。 波は強く繰り返される。脈を打つ。生きている。強く。正しく。 横目に走る少女を捉えた。とても足が速い。勢いよく海に突っ込み、ぐんぐん進む。とうと…