月光美術館はジャングル
いざ夢のジャングルへ...
緊迫感を持て、君の手を引く数多の金属音。赤子の泣き声に似た響音。立ち向かえ。
闇に照らされた石の廊下を照らす魔法。気づくのだ。
スコールスコール。ノイズへ。唇へ。
警笛。警笛。亜空へ。土器へ。
夜空に似た始まり。君のそれは快晴を保っている。高らかに歌おう。ありもしない映画のワンシーンが延々と続く。
黄色い軟体状の生き物の声で目覚める。夢を見ていた?
いや、現実だ。やつの声がトリガー?
ハッピーエンドのような怠惰の輪廻のような。
夢の中で黄色い生き物がなにかを喋っている。私の知る余地のない言語で。
4次元の中で連鎖は続く。4次元の中で連鎖は続く。4次元の中で連鎖は続く。
蓮の葉を月光が照らす。茶色いエレファントノーズフィッシュがこちらを見ている。水辺に充満する湿った夜を、月光が大胆に切り裂くよ。
見えないところでごにょごにょと獣が呟く。
近未来のオランウータンは全てを見透かして歌う。森は静かになった。被食者はひとまずの安寧に安堵する。アングルは感動的に上へ。
心肺が蠢いている。全員が上を見て、その瞳に月を写す。
雨の庭を蹂躙する存在。神々しく、仰々しく降り立つ存在があった。もたらされる悪と、聖剣の役割を成す雨。
あの頃の口笛を懐かしむ。平穏をかき乱す。句読点が降り止んだあと、何食わぬ顔で身をくねらせる白い生き物。絶対的な存在になり半ば陶酔状態。
別のどこかで、絵画と椅子がじっと佇む。意思を持って佇む。
こちらがそこへ立ち入ると、意味ありげな目で不気味に歌う。私を試しているのだ。雨粒の滴る音。
奥へどうぞ。
風が吹く。
足場を滑る。そのうち川になるだろう。
霧が立ち込め、彼らの気配はとっくにない。
消失。
彼らの特別なもの。
我々はそれを寺院と呼んだ。(名付けた。)
霊獣が降り立つ屋根の上、やはり月光に照らされている。御幸を携え、社を廻る。鐘が鳴る。
摂理をとき、弱者を喰らう。命知らずの猩々達が笑う。
一体何なんだここは?間違って迷い込んだ違う舞台だ。ここにいてはならない?わからない。
有耶無耶になっていく。鐘が鳴る。
...
鯨(くじら)
くじら。まるで怪獣のように心を蹂躙する。成すすべもなく脅かされる脳みそ。
重機のような、兵器のような、神のようなその姿態。終末を予見させるかの如きその慈しみを、船はどう思っているのだろうか。私の皮膚は鈍くうねり始めた。鯨鯨鯨...
■
じっとりと湿った空っぽに近づいている。
無題2
紫色の唇がいる。北半球の太陽は大体苦しい。
歩くにはそれなりの対応が取られる。ドアを開けるべきではない。
じかんというがいねんは空から降ってこない。ライドシンバルだけが天からの供物。
しゅうしゅうしゃらろん しゅいら
しゅうしゅうしゃらろん しゅいら
1人だけでこうしている。タカとタカは渓谷の上で戦う。それは穢れのないフルートの音のためだ。針葉樹に囲まれる。筋肉のこわばりを聞く。
ここではないところへ、移動していく。流れるように。供物は神へ贈るものだ。
懐かしい木の匂いを嗅ぐ、焦げ茶色のタンス。
子供の私はそこを駆ける。タンスを、椅子をすり抜けて。愛を、愛をちょうだいよ。
そこに居続けることが重要なのです。全てを知っている君達に問う。
果てしなく長い音楽を聴いて、白亜の森へ吸い込まれる。雪が降っている。眠りそうになるのをこらえて、耳を傾ける。いつまでも終わらない。遠くへ消えた。文字の左下が欠けた時、月と同じくしてコートの扉が開く。
果てが見えたら、そこへ行くよ。陽炎を追い越して走った君の背中を...
ああ幼い時の記憶。積み木?罪?僕は組み立てていく。月が消えた。
現実に頭をガツンと殴られた。必要があるのだ。湖畔でコーヒーをアルペジオでかき混ぜる。安心とは死と供物でできている。
獣道は螺旋を描き、地下へ消えていく。
眼前にはあられのようなビー玉。光ったり消えたりしながら戯れる。
崖を起点に視界は四方へ曲がる。いわゆる回転というやつ。もう二度と返らない鳥の街。
純粋無垢な少年を殺してしまえよ。ドーナツをかじった瞬間にかけらはかけらに成り果てる。穴はそこへいく?道化師のようなスカートを履く夫人。ピエロを見ているからなおさらおかしい。気づかせてやろうよ、だれか。
海と同じで音楽も泡立っている。強いエネルギーで波打つ君。いつまでも終わらないことに気づかせてやろうよ。
無事、時は鈍り、100年の幸せを約束した。
それがこの話のハッピーエンドというわけ。
無毒化
さて、私自身を解毒しよう。やりかたはいくつかあるはず。
夜中の音楽番組にだまされてはいけない。例えば、あちこちにある特殊な磁場が少しずつヒト科に影響を及ぼす。長い目で見たらそれは致命的だ。
食パン1枚に仕込まれたカテゴライザー。私はジャムとバターをたっぷりつけた。長時間の露光で見たら、それはまるでコメディ。
このおかしなビル群の中で君を愛す。
樹海航海記
ノルディック柄のセーターのような気分になる。或いは、時化の樹海を航海するような、そんな気分になる。
いずれも私がコーヒーを一口すすった時の気分だ。
__一度、荒れた樹海で溺れたことがある。風は強く、波は高かった。大きな揺れで体勢を崩し、そのまま船から落ちてしまった。代わりに甲板にはイタチが一匹打ち上げられていた。
あえなく樹海の深いところまで沈んでしまった私は草木に揉まれて明後日の方向へ流されてしまった。
なんとかブナの木のうろに逃げ込んだ時には雷も鳴り始めていた。うろにはフクロウの子供が3羽おり、雷の光を大きな黒い目で見つめていた。
そこで一晩明かしたときにはもう樹海は落ち着きを取り戻していた。陽光を受け一斉に光合成する葉たち、煌めく水滴、土の匂い。
少し離れたところで大きなカモシカが辺りを見回している。頭上ではリスが枝を飛び回り、水滴をぱたぱた落とす。その音に驚き耳を立てるウサギ。
樹海は嵐を許したように見えた。
3羽のフクロウはいなくなっていた。狭いうろで小さく伸びをすると、僕はどうしようもなくコーヒーが飲みたいことに気づいた。